1,秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ,我が衣手は 露にぬれつつ,あきのたの かりほのいほの とまをあらみ,わがころもでは つゆにぬれつつ,天智天皇,てんじてんのう,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/04/Hyakuninisshu_001.jpg 2,春過ぎて 夏来にけらし 白妙の,衣ほすてふ 天の香具山,はるすぎて なつきにけらし しろたへの,ころもほすてふ あまのかぐやま,持統天皇,じとうてんのう,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/95/Hyakuninisshu_002.jpg 3,あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の,ながながし夜を ひとりかも寝む,あしびきの やまどりのをの しだりをの,ながながしよを ひとりかもねむ,柿本人麻呂,かきのもとのひとまろ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f6/Hyakuninisshu_003.jpg 4,田子の浦に うちいでてみれば 白妙の,富士の高嶺に 雪は降りつつ,たごのうらに うちいでてみれば しろたへの,ふじのたかねに ゆきはふりつつ,山部赤人,やまべのあかひと,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/37/Hyakuninisshu_004.jpg 5,奥山に もみぢふみわけ なく鹿の,声聞く時ぞ 秋はかなしき,おくやまに もみぢふみわけ なくしかの,こゑきくときぞ あきはかなしき,猿丸太夫,さるまるだゆう,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cd/Hyakuninisshu_005.jpg 6,かささぎの 渡せる橋に おく霜の,白きをみれば 夜ぞふけにける,かささぎの わたせるはしに おくしもの,しろきをみれば よぞふけにける,中納言家持,ちゅうなごんやかもち,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fe/Hyakuninisshu_006.jpg 7,天の原 ふりさけみれば 春日なる,三笠の山に いでし月かも,あまのはら ふりさけみれば かすがなる,みかさのやまに いでしつきかも,阿倍仲麻呂,あべのなかまろ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/46/Hyakuninisshu_007.jpg 8,わが庵は 都のたつみ しかぞすむ,世をうぢ山と 人はいふなり,わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ,よをうぢやまと ひとはいふなり,喜撰法師,きせんほうし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d0/Hyakuninisshu_008.jpg 9,花の色は うつりにけりな いたづらに,わが身よにふる ながめせしまに,はなのいろは うつりにけりな いたづらに,わがみよにふる ながめせしまに,小野小町,おののこまち,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/94/Hyakuninisshu_009.jpg 10,これやこの 行くも帰るも わかれては,しるもしらぬも 逢坂の関,これやこの ゆくもかへるも わかれては,しるもしらぬも あふさかのせき,蝉丸,せみまる,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/29/Hyakuninisshu_010.jpg 11,わたの原 八十島かけて こぎいでぬと,人にはつげよ あまのつり舟,わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと,ひとにはつげよ あまのつりぶね,参議篁,さんぎたかむら,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/7e/Hyakuninisshu_011.jpg 12,天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ,をとめの姿 しばしとどめむ,あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ,をとめのすがた しばしとどめむ,僧正遍昭,そうじょうへんじょう,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b4/Hyakuninisshu_012.jpg 13,つくばねの 峰よりおつる みなの川,恋ぞつもりて 淵となりぬる,つくばねの みねよりおつる みなのがは,こひぞつもりて ふちとなりぬる,陽成院,ようぜいいん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/85/Hyakuninisshu_013.jpg 14,みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに,みだれそめにし 我ならなくに,みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに,みだれそめにし われならなくに,河原左大臣,かわらのさだいじん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/94/Hyakuninisshu_014.jpg 15,君がため 春の野に出でて 若菜つむ,わが衣手に 雪はふりつつ,きみがため はるののにいでて わかなつむ,わがころもでに ゆきはふりつつ,光孝天皇,こうこうてんのう,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/05/Hyakuninisshu_015.jpg 16,立ちわかれ いなばの山の 峰に生ふる,まつとし聞かば いまかへりこむ,たちわかれ いなばのやまの みねにおふる,まつとしきかば いまかへりこむ,中納言行平,ちゅうなごんゆきひら,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/8b/Hyakuninisshu_016.jpg 17,ちはやぶる 神代もきかず 竜田川,からくれなゐに 水くくるとは,ちはやぶる かみよもきかず たつたがは,からくれなゐに みづくくるとは,在原業平朝臣,ありわらのなりひらあそん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2c/Hyakuninisshu_017.jpg 18,住の江の 岸による波 よるさへや,夢のかよひ路 人目よくらむ,すみのえの きしによるなみ よるさへや,ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ,藤原敏行朝臣,ふじわらのとしゆきあそん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c6/Hyakuninisshu_018.jpg 19,難波潟 みじかき蘆の ふしのまも,あはでこの世を すぐしてよとや,なにはがた みじかきあしの ふしのまも,あはでこのよを すぐしてよとや,伊勢,いせ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/85/Hyakuninisshu_019.jpg 20,わびぬれば いまはたおなじ 難波なる,身をつくしても あはむとぞ思ふ,わびぬれば いまはたおなじ なにはなる,みをつくしても あはむとぞおもふ,元良親王,もとよししんのう,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/97/Hyakuninisshu_020.jpg 21,今こむと いひしばかりに 長月の,有明の月を まちいでつるかな,いまこむと いひしばかりに ながつきの,ありあけのつきを まちいでつるかな,素性法師,そせいほうし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/3b/Hyakuninisshu_021.jpg 22,吹くからに 秋の草木の しをるれば,むべ山風を 嵐といふらむ,ふくからに あきのくさきの しをるれば,むべやまかぜを あらしといふらむ,文屋康秀,ふんやのやすひで,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/11/Hyakuninisshu_022.jpg 23,月みれば ちぢにものこそ かなしけれ,わが身一つの 秋にはあらねど,つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ,わがみひとつの あきにはあらねど,大江千里,おおえのちさと,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/e4/Hyakuninisshu_023.jpg 24,このたびは ぬさもとりあへず 手向山,もみぢのにしき 神のまにまに,このたびは ぬさもとりあへず たむけやま,もみぢのにしき かみのまにまに,菅家,かんけ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/01/Hyakuninisshu_024.jpg 25,名にし負はば 逢坂山の さねかづら,人にしられで 来るよしもがな,なにしおはば あふさかやまの さねかづら,ひとにしられで くるよしもがな,三条右大臣,さんじょうのうだいじん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d2/Hyakuninisshu_025.jpg 26,小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば,いまひとたびの みゆきまたなむ,をぐらやま みねのもみぢば こころあらば,いまひとたびの みゆきまたなむ,貞信公,ていしんこう,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b4/Hyakuninisshu_026.jpg 27,みかの原 わきて流るる いづみ川,いつみきとてか 恋しかるらむ,みかのはら わきてながるる いづみがは,いつみきとてか こひしかるらむ,中納言兼輔,ちゅうなごんかねすけ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/7b/Hyakuninisshu_027.jpg 28,山里は 冬ぞさびしさ まさりける,人目も草も かれぬと思へば,やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける,ひとめもくさも かれぬとおもへば,源宗行朝臣,みなもとのむねゆきあそん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/af/Hyakuninisshu_028.jpg 29,心当てに 折らばや折らむ 初霜の,おきまどはせる 白菊の花,こころあてに をらばやをらむ はつしもの,おきまどはせる しらぎくのはな,凡河内躬恒,おおしこうちのみつね,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cf/Hyakuninisshu_029.jpg 30,有明の つれなく見えし 別れより,あかつきばかり うきものはなし,ありあけの つれなくみえし わかれより,あかつきばかり うきものはなし,壬生忠岑,みぶのただみね,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/8a/Hyakuninisshu_030.jpg 31,朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに,吉野の里に 降れる白雪,あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに,よしののさとに ふれるしらゆき,坂上是則,さかのうえのこれのり,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/ce/Hyakuninisshu_031.jpg 32,山川に 風のかけたる しがらみは,ながれもあへぬ もみぢなりけり,やまがはに かぜのかけたる しがらみは,ながれもあへぬ もみぢなりけり,春道列樹,はるみちのつらき,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a6/Hyakuninisshu_032.jpg 33,久方の 光のどけき 春の日に,しづ心なく 花の散るらむ,ひさかたの ひかりのどけき はるのひに,しづこころなく はなのちるらむ,紀友則,きのとものり,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/ef/Hyakuninisshu_033.jpg 34,誰をかも しる人にせむ 高砂の,松も昔の 友ならなくに,たれをかも しるひとにせむ たかさごの,まつもむかしの ともならなくに,藤原興風,ふじわらのおきかぜ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f6/Hyakuninisshu_034.jpg 35,人はいさ 心も知らず ふるさとは,花ぞ昔の 香に匂ひける,ひとはいさ こころもしらず ふるさとは,はなぞむかしの かににほひける,紀貫之,きのつらゆき,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/32/Hyakuninisshu_035.jpg 36,夏の夜は まだ宵ながら あけぬるを,雲のいづこに 月やどるらむ,なつのよは まだよひながら あけぬるを,くものいづこに つきやどるらむ,清原深養父,きよはらのふかやぶ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f7/Hyakuninisshu_036.jpg 37,白露に 風の吹きしく 秋の野は,つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける,しらつゆに かぜのふきしく あきののは,つらぬきとめぬ たまぞちりける,文屋朝康,ふんやのあさやす,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c5/Hyakuninisshu_037.jpg 38,忘らるる 身をば思はず ちかひてし,人の命の 惜しくもあるかな,わすらるる みをばおもはず ちかひてし,ひとのいのちの をしくもあるかな,右近,うこん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a5/Hyakuninisshu_038.jpg 39,浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど,あまりてなどか 人の恋しき,あさぢふの をののしのはら しのぶれど,あまりてなどか ひとのこひしき,参議等,さんぎひとし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/7b/Hyakuninisshu_039.jpg 40,しのぶれど 色に出でにけり 我が恋は,物や思ふと 人の問ふまで,しのぶれど いろにいでにけり わがこひは,ものやおもふと ひとのとふまで,平兼盛,たいらのかねもり,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/7b/Hyakuninisshu_040.jpg 41,恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり,人しれずこそ 思ひそめしか,こひすてふ わがなはまだき たちにけり,ひとしれずこそ おもひそめしか,壬生忠見,みぶのただみ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/61/Hyakuninisshu_041.jpg 42,ちぎりきな かたみに袖を しぼりつつ,末の松山 波こさじとは,ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ,すゑのまつやま なみこさじとは,清原元輔,きよはらのもとすけ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/54/Hyakuninisshu_042.jpg 43,あひみての のちの心に くらぶれば,昔は物を 思はざりけり,あひみての のちのこころに くらぶれば,むかしはものを おもはざりけり,権中納言敦忠,ごんちゅうなごんあつただ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2a/Hyakuninisshu_043.jpg 44,あふことの たえてしなくば なかなかに,人をも身をも 恨みざらまし,あふことの たえてしなくば なかなかに,ひとをもみをも うらみざらまし,中納言朝忠,ちゅうなごんあさただ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2c/Hyakuninisshu_044.jpg 45,あはれとも いふべき人は 思ほえで,身のいたづらに なりぬべきかな,あはれとも いふべきひとは おもほえで,みのいたづらに なりぬべきかな,謙徳公,けんとくこう,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/40/Hyakuninisshu_045.jpg 46,由良のとを 渡る舟人 かぢをたえ,ゆくへも知らぬ 恋の道かな,ゆらのとを わたるふなびと かぢをたえ,ゆくへもしらぬ こひのみちかな,曽禰好忠,そねのよしただ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5a/Hyakuninisshu_046.jpg 47,八重むぐら しげれる宿の さびしきに,人こそ見えね 秋は来にけり,やへむぐら しげれるやどの さびしきに,ひとこそみえね あきはきにけり,恵慶法師,えぎょうほうし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0f/Hyakuninisshu_047.jpg 48,風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ,くだけて物を 思ふころかな,かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ,くだけてものを おもふころかな,源重之,みなもとのしげゆき,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/97/Hyakuninisshu_048.jpg 49,みかきもり 衛士のたく火の 夜はもえ,昼は消えつつ 物をこそ思へ,みかきもり ゑじのたくひの よるはもえ,ひるはきえつつ ものをこそおもへ,大中臣能宣朝臣,おおなかとみのよしのぶあそん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b8/Hyakuninisshu_049.jpg 50,君がため 惜しからざりし いのちさへ,長くもがなと 思ひけるかな,きみがため をしからざりし いのちさへ,ながくもがなと おもひけるかな,藤原義孝,ふじわらのよしたか,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/85/Hyakuninisshu_050.jpg 51,かくとだに えやはいぶきの さしも草,さしもしらじな もゆる思ひを,かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ,さしもしらじな もゆるおもひを,藤原実方朝臣,ふじわらのさねかたあそん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/48/Hyakuninisshu_051.jpg 52,あけぬれば 暮るるものとは 知りながら,なほうらめしき 朝ぼらけかな,あけぬれば くるるものとは しりながら,なほうらめしき あさぼらけかな,藤原道信朝臣,ふじわらのみちのぶあそん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/08/Hyakuninisshu_052.jpg 53,なげきつつ ひとりぬる夜の あくるまは,いかに久しき ものとかはしる,なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは,いかにひさしき ものとかはしる,右大将道綱母,うだいしょうみちつなのはは,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/02/Hyakuninisshu_053.jpg 54,忘れじの ゆく末までは かたければ,今日をかぎりの いのちともがな,わすれじの ゆくすゑまでは かたければ,けふをかぎりの いのちともがな,儀同三司母,ぎどうさんしのはは,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a0/Hyakuninisshu_054.jpg 55,滝の音は たえて久しく なりぬれど,名こそ流れて なほ聞こえけれ,たきのおとは たえてひさしく なりぬれど,なこそながれて なほきこえけれ,大納言公任,だいなごんきんとう,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/31/Hyakuninisshu_055.jpg 56,あらざらむ この世のほかの 思ひ出に,いまひとたびの あふこともがな,あらざらむ このよのほかの おもひでに,いまひとたびの あふこともがな,和泉式部,いずみしきぶ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/99/Hyakuninisshu_056.jpg 57,めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに,雲がくれにし 夜半の月かな,めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに,くもがくれにし よはのつきかな,紫式部,むらさきしきぶ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/13/Hyakuninisshu_057.jpg 58,ありま山 ゐなの笹原 風吹けば,いでそよ人を 忘れやはする,ありまやま ゐなのささはら かぜふけば,いでそよひとを わすれやはする,大弐三位,だいにのさんみ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/71/Hyakuninisshu_058.jpg 59,やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて,かたぶくまでの 月を見しかな,やすらはで ねなましものを さよふけて,かたぶくまでの つきをみしかな,赤染衛門,あかぞめえもん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0f/Hyakuninisshu_059.jpg 60,大江山 いく野の道の 遠ければ,まだふみもみず 天の橋立,おほえやま いくののみちの とほければ,まだふみもみず あまのはしだて,小式部内侍,こしきぶのないし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/ae/Hyakuninisshu_060.jpg 61,いにしへの 奈良の都の 八重桜,けふ九重に 匂ひぬるかな,いにしへの ならのみやこの やへざくら,けふここのへに にほひぬるかな,伊勢大輔,いせのたいふ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fb/Hyakuninisshu_061.jpg 62,夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも,よに逢坂の 関はゆるさじ,よをこめて とりのそらねは はかるとも,よにあふさかの せきはゆるさじ,清少納言,せいしょうなごん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d7/Hyakuninisshu_062.jpg 63,いまはただ 思ひ絶えなむ とばかりを,人づてならで 言ふよしもがな,いまはただ おもひたえなむ とばかりを,ひとづてならで いふよしもがな,左京大夫道雅,さきょうのだいぶみちまさ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/be/Hyakuninisshu_063.jpg 64,朝ぼらけ 宇治の川霧 絶え絶えに,あらはれわたる 瀬々の網代木,あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに,あらはれわたる せぜのあじろぎ,権中納言定頼,ごんちゅうなごんさだより,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/25/Hyakuninisshu_064.jpg 65,うらみわび ほさぬ袖だに あるものを,恋にくちなむ 名こそをしけれ,うらみわび ほさぬそでだに あるものを,こひにくちなむ なこそをしけれ,相模,さがみ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/51/Hyakuninisshu_065.jpg 66,もろともに あはれと思へ 山桜,花よりほかに 知る人もなし,もろともに あはれとおもへ やまざくら,はなよりほかに しるひともなし,前大僧正行尊,さきのだいそうじょうぎょうそん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/26/Hyakuninisshu_066.jpg 67,春の夜の 夢ばかりなる 手枕に,かひなくたたむ 名こそをしけれ,はるのよの ゆめばかりなる たまくらに,かひなくたたむ なこそをしけれ,周防内侍,すおうのないし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/93/Hyakuninisshu_067.jpg 68,心にも あらでうき世に ながらへば,恋しかるべき 夜半の月かな,こころにも あらでうきよに ながらへば,こひしかるべき よはのつきかな,三条院,さんじょういん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0e/Hyakuninisshu_068.jpg 69,あらし吹く み室の山の もみぢばは,竜田の川の 錦なりけり,あらしふく みむろのやまの もみぢばは,たつたのかはの にしきなりけり,能因法師,のういんほうし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d9/Hyakuninisshu_069.jpg 70,さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば,いづくもおなじ 秋の夕ぐれ,さびしさに やどをたちいでて ながむれば,いづくもおなじ あきのゆふぐれ,良選法師,りょうぜんほうし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/75/Hyakuninisshu_070.jpg 71,夕されば 門田の稲葉 おとづれて,蘆のまろやに 秋風ぞ吹く,ゆふされば かどたのいなば おとづれて,あしのまろやに あきかぜぞふく,大納言経信,だいなごんつねのぶ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1b/Hyakuninisshu_071.jpg 72,音に聞く 高師の浜の あだ波は,かけじや袖の ぬれもこそすれ,おとにきく たかしのはまの あだなみは,かけじやそでの ぬれもこそすれ,祐子内親王家紀伊,ゆうしないしんのうけのきい,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2b/Hyakuninisshu_072.jpg 73,高砂の をのへのさくら さきにけり,とやまのかすみ たたずもあらなむ,たかさごの をのへのさくら さきにけり,とやまのかすみ たたずもあらなむ,前権中納言匡房,さきのごんちゅうなごんまさふさ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a2/Hyakuninisshu_073.jpg 74,憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ,はげしかれとは 祈らぬものを,うかりける ひとをはつせの やまおろしよ,はげしかれとは いのらぬものを,源俊頼朝臣,みなもとのとしよりあそん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/00/Hyakuninisshu_074.jpg 75,ちぎりおきし させもが露を いのちにて,あはれ今年の 秋もいぬめり,ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて,あはれことしの あきもいぬめり,藤原基俊,ふじわらのもととし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/55/Hyakuninisshu_075.jpg 76,わたの原 こぎいでてみれば 久方の,雲いにまがふ 沖つ白波,わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの,くもゐにまがふ おきつしらなみ,法性寺入道前関白太政大臣,ほつしょうじにゅうどうさきの かんぱくだいじょうだいじん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/da/Hyakuninisshu_076.jpg 77,瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の,われても末に あはむとぞ思ふ,せをはやみ いはにせかるる たきがはの,われてもすゑに あはむとぞおもふ,崇徳院,すとくいん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/e2/Hyakuninisshu_077.jpg 78,淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に,幾夜ねざめぬ 須磨の関守,あはぢしま かよふちどりの なくこゑに,いくよねざめぬ すまのせきもり,源兼昌,みなもとのかねまさ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/bf/Hyakuninisshu_078.jpg 79,秋風に たなびく雲の たえ間より,もれいづる月の 影のさやけさ,あきかぜに たなびくくもの たえまより,もれいづるつきの かげのさやけさ,左京大夫顕輔,さきょうのだいぶあきすけ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1d/Hyakuninisshu_079.jpg 80,長からむ 心もしらず 黒髪の,みだれてけさは 物をこそ思へ,ながからむ こころもしらず くろかみの,みだれてけさは ものをこそおもへ,待賢門院堀河,たいけんもんいんほりかわ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f9/Hyakuninisshu_080.jpg 81,ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば,ただありあけの 月ぞ残れる,ほととぎす なきつるかたを ながむれば,ただありあけの つきぞのこれる,後徳大寺左大臣,ごとくだいじさだいじん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/da/Hyakuninisshu_081.jpg 82,思ひわび さてもいのちは あるものを,憂きにたへぬは 涙なりけり,おもひわび さてもいのちは あるものを,うきにたへぬは なみだなりけり,道因法師,どういんほうし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f2/Hyakuninisshu_082.jpg 83,世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る,山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる,よのなかよ みちこそなけれ おもひいる,やまのおくにも しかぞなくなる,皇太后宮大夫俊成,こうたいごうぐうのだいぶしゅんぜい,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/be/Hyakuninisshu_083.jpg 84,ながらへば またこのごろや しのばれむ,憂しと見し世ぞ 今は恋しき,ながらへば またこのごろや しのばれむ,うしとみしよぞ いまはこひしき,藤原清輔朝臣,ふじわらのきよすけあそん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/05/Hyakuninisshu_084.jpg 85,夜もすがら 物思ふころは 明けやらで,閨のひまさへ つれなかりけり,よもすがら ものおもふころは あけやらで,ねやのひまさへ つれなかりけり,俊恵法師,しゅんえほうし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/06/Hyakuninisshu_085.jpg 86,なげけとて 月やは物を 思はする,かこち顔なる わが涙かな,なげけとて つきやはものを おもはする,かこちがほなる わがなみだかな,西行法師,さいぎょうほうし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/61/Hyakuninisshu_086.jpg 87,村雨の 露もまだひぬ まきの葉に,霧たちのぼる 秋の夕ぐれ,むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに,きりたちのぼる あきのゆふぐれ,寂蓮法師,じゃくれんほうし,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/9f/Hyakuninisshu_087.jpg 88,難波江の 蘆のかりねの ひとよゆゑ,みをつくしてや 恋ひわたるべき,なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ,みをつくしてや こひわたるべき,皇嘉門院別当,こうかもんいんのべつとう,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Hyakuninisshu_088.jpg 89,玉の緒よ たえなばたえね ながらへば,忍ぶることの 弱りもぞする,たまのをよ たえなばたえね ながらへば,しのぶることの よわりもぞする,式子内親王,しきしないしんのう,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b1/Hyakuninisshu_089.jpg 90,見せばやな 雄島のあまの 袖だにも,ぬれにぞぬれし 色はかはらず,みせばやな をじまのあまの そでだにも,ぬれにぞぬれし いろはかはらず,殷富門院大輔,いんぶもんいんのたいふ,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/82/Hyakuninisshu_090.jpg 91,きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに,衣かたしき ひとりかも寝む,きりぎりす なくやしもよの さむしろに,ころもかたしき ひとりかもねむ,後京極摂政前太政大臣,ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c3/Hyakuninisshu_091.jpg 92,わが袖は 潮干にみえぬ 沖の石の,人こそしらね かわくまもなし,わがそでは しほひにみえぬ おきのいしの,ひとこそしらね かわくまもなし,二条院讃岐,にじょういんのさぬき,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d2/Hyakuninisshu_092.jpg 93,世の中は つねにもがもな なぎさこぐ,あまの小舟の 綱手かなしも,よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ,あまのをぶねの つなでかなしも,鎌倉右大臣,かまくらのうだいじん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f2/Hyakuninisshu_093.jpg 94,み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて,ふるさと寒く 衣うつなり,みよしのの やまのあきかぜ さよふけて,ふるさとさむく ころもうつなり,参議雅経,さんぎまさつね,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2f/Hyakuninisshu_094.jpg 95,おほけなく うき世の民に おほふかな,わがたつ杣に 墨染の袖,おほけなく うきよのたみに おほふかな,わがたつそまに すみぞめのそで,前大僧正慈円,さきのだいそうじょうじえん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a6/Hyakuninisshu_095.jpg 96,花さそふ 嵐の庭の 雪ならで,ふりゆくものは わが身なりけり,はなさそふ あらしのにはの ゆきならで,ふりゆくものは わがみなりけり,入道前太政大臣,にゅうどうさきのだいじょうだいじん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/83/Hyakuninisshu_096.jpg 97,こぬ人を まつほの浦の 夕なぎに,焼くやもしほの 身もこがれつつ,こぬひとを まつほのうらの ゆふなぎに,やくやもしほの みもこがれつつ,権中納言定家,ごんちゅうなごんていか,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cb/Hyakuninisshu_097.jpg 98,風そよぐ ならの小川の 夕ぐれは,みそぎぞ夏の しるしなりける,かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは,みそぎぞなつの しるしなりける,従二位家隆,じゅうにいいえたか,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/00/Hyakuninisshu_098.jpg 99,人もをし 人もうらめし あぢきなく,世を思ふゆゑに 物思ふ身は,ひともをし ひともうらめし あぢきなく,よをおもふゆゑに ものおもふみは,後鳥羽院,ごとばいん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/8c/Hyakuninisshu_099.jpg 100,ももしきや ふるき軒ばの しのぶにも,なほあまりある 昔なりけり,ももしきや ふるきのきばの しのぶにも,なほあまりある むかしなりけり,順徳院,じゅんとくいん,http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/ff/Hyakuninisshu_100.jpg